文部科学省:科学研究費 基盤研究費S(代表:大政健史)(2017-2021年度)
工業用動物細胞を用いた統合バイオプロセスに関する基盤的研究
工学部:高校生向けサイト
バイオ医薬などを動物細胞で安定的に生産するため 40以上の企業•大学•研究機関とのコンソーシアム研究を統括
研究成果を取りまとめた総説(日本生物工学会功績賞授賞論文)
生物化学工学分野における動物細胞工学に関する研究
チャイニーズハムスター卵巣 (CHO)細胞は、卵巣細胞から生体外培養を経て構築されてから50年以上、生体外の人工的な環境において増殖しており、科学的研究のみならず、製薬産業においても多用されています。産業に利用されている微生物を工業用微生物と称しますが、CHO細胞は、まさに「工業用動物細胞」と言える存在になっています。特に、バイオ医薬品生産においては実際に上市されている抗体医薬品の6割以上の宿主細胞として利用され、抗体医薬品の世界的な成長に伴って、近年ではバイオ医薬品全体の品目数の5割近くの生産宿主として、生産基盤を支えています。
現在、CHO細胞は10g/Lを超える高濃度の抗体を培地中に分泌生産可能であり、培養だけに限ると、その培養コストもg抗体生産あたり数ドルで達成可能です。これだけ汎用されているCHO細胞自身の科学的解明については、まだまだ十分とは言えません。これまで代表研究者は遺伝子増幅CHO細胞のバクテリア人工染色体BACライブラリーを世界で初めて構築したり、染色体の再編成や不安定解析を通し、生産細胞の科学的解明を行っています。
特に、本基盤研究では、工業用動物細胞としてのCHO細胞の科学的解明を出発点として、細胞工学的手法ならびにバイオプロセス構築を連携して研究を行い、統合バイオプロセスの基盤を構築することを目的としています。細胞内での分泌過程解明や生産性向上を目指した「セルエンジニアリング開発」と細胞の安定性とその解明に基づいた「バイオプロセス開発」を組み合わせながら、「統合化エンジニアリング」における科学的解明を主体として研究を行っています。